GARDENS TO VISIT

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今年の夏は猛暑と、まさに文字通りの焼けるような暑さ。お店の壁一面に掛けているハンギングポットのアイビーゼラニュウムも今は少し休ませて、木陰に避難させています。そんな中、お客様とのガーデニング談義はもっぱらイギリス滞在中のガーデンめぐりの話題。夏のイギリスはいたるところでオープンガーデンが行われていて、個人宅のガーデンから、由緒あるpublic gardenまで、時間をかけて丁寧に作り上げられたひとつひとつの景色は、ガーデナーの創意工夫と熱意が感じられ、どこをとっても絵になるシーンに心を動かされます。花とお庭、そして自然の情景をこよなく愛する英国の人々が長い歴史の中で重ねてきた庭めぐりという楽しみ。夏のイギリスのお庭を楽しんでいる英国の人々の様子を何ともうらやましい気持ちで眺めながら、英国の人々にとっての庭めぐりは、生き方にも通じる広く奥深い文化なのだなと、大いに刺激を受けて毎回帰国の途につきます。今から20年ほど前の買い付け中に、小さな町の本屋さんで手に入れたこの本は、ぜひ訪れてみたい100の庭園が紹介されており、写真はもちろん、成り立ちと歴史も加えられていて、しばし暑さを忘れさせてくれる素敵な一冊。日本の猛暑に参ってしまいそうなとき、そしてもちろん、イギリス旅行を計画されている方にも、ぜひお勧めです。

GARDENS TO VISIT (SUCCESSFUL GARDENING) -Published By The Reader’s Digest

English Style

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イギリスのカントリーサイドを訪ねた折に小さな村で見つけたtea roomと書かれた看板。ちょうど午後2時を回ったところでちょっと休憩に中に入ると、茅葺の屋根の古いコテージは低い天井にぶらさがるような太い梁、壁には大きな飾り棚があり、古びた味のある銅のジャグや可愛らしいお皿などが並んでいます。暗い室内の奥には、ガーデンに通じる出入り口があり、美しい芝のお庭で子供連れの家族が燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びて、休日のひとときを楽しんでいました。夏の間のしんと冷たい暖炉の脇のテーブルで、濃いめのミルクティーを飲み、ハム入りのサンドウィッチと、クリスプスをつまみながら、ゆっくり部屋の中を見回すと、無造作ながらもとてもイギリスらしい居心地良い雰囲気。真鍮製の飾り物やシルバーの蝋燭立ても、さりげなく、でもここしかないというバランスの良い場所に飾られています。おそらく300年以上、いやもっともっと前からここにあるこの小さなコテージは、地元の人たちに愛されながら長い長い時間をかけて、居心地の良い空間になっていったのでしょう。ポートベロの本棚にずいぶん昔からある「English Style」という一冊のずっしりとした本は、久し振りに開いてみると、ちょうどイギリスで見た光景そのままの写真が載っていて、小さなメモ用紙がそのページにはさんでありました。お客様とこんな雰囲気のなかでゆっくりとおしゃべりができる店を、とはさんだメモ用紙。雨模様の週末に、遠くから訪れてくださったお客様との豊かなひとときを楽しく思い浮かべながら、あらためて1ページ1ページ見返してみるのでした。

English Style  Suzanne Slesin & Stafford Cliff Photgographs By Ken Kirkwood

 

お茶の時間のイギリス菓子

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今年のゴールデンウィークは、たくさんの懐かしいお客様にご来店いただき、本当に幸せな時間を過ごすことができました。5年ぶりにお会いするお客様、10年ぶりにお会いするお客様、そしてお手紙をくださったお客様。1978年の創業以来、たくさんの皆様に支えていただいたこと、心からの感謝の気持ちでいっぱいになりました。素朴で心温まるイギリスのお菓子と、ティーポットにたっぷりと注がれた紅茶。「おいしい紅茶を一緒にいかが?」ではじまるゆったりとした贅沢な時間を大切なお客様と一緒に過ごせたら、そんな思いで手に取ったのがこの一冊。仕入れ先のディーラーでたっぷりの紅茶とともにいただく作りたてのサンドウィッチや、田舎町のティールームで味わったクロテッドクリームたっぷりのスコーン、学生時代にお世話になったリタが週末に作ってくれた美味しいプディング…長く愛されてきたイギリスの伝統の味を、懐かしい記憶とともに思い出しながら、今もむかしも変わらないイギリスの姿や人々のあたたかさ、古き良きものに愛着を持つイギリスらしさを感じさせてくれる一冊でした。いつもと同じこの場所で、ずっと変わらずにお客様をあたたかくお迎えできるお店であり続けられるよう、これからも家族、スタッフとともに、ひとつひとつの出会いを大切に頑張ってまいります。

お茶の時間のイギリス菓子 砂古玉緒

The English Cottage

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店舗を兼ねた住まいでもある当店の建物は、ごく普通の建売住宅を土台にして先代の社長が1973年頃からリフォームを重ねたもので、イギリスの田舎のハーフティンバーの建築を参考に瀬戸内海で使用されていた木造船の床板、備前の耐火煉瓦、耐用年数を過ぎた鉄道の軌道敷などを取り入れておよそ40年の長い月日をかけて完成させました。緑あふれる中庭、二棟続きの店舗、そして隣接するステンドグラスの工房は、たくさんのお客様や、ともに働くスタッフ、そして私たち家族が集う場所としてかけがえのない幸せなひとときと、潤いのある景色を提供してくれます。春になれば小鳥がさえずり、夏は蝉の声、秋には金木犀の香り、冬は枯木立から見える星空、そして年月を経るごとにしっとりとした趣を増す佇まい。この空間ができあがるまでのこだわりと熱意は並々ならぬものであったと思います。カメラを片手にイギリスの田舎町を巡り、車を停めてはハーフティンバーのコテージの写真を熱心に撮影する社長の様子が何冊ものスクラップブックを見るたびに思い出されます。今回ご紹介する本はたくさんの資料ととともにひっそりと本棚に置かれていたもの。大切に守られてきた英国のカントリーサイドのコテージが木組みの構造、茅葺や石板の屋根、煉瓦と漆喰壁の様式、各部屋の様子など、写真とイラストで丁寧に解説されています。家とともに人生を歩みながら、ゆっくりと時間をかけて読みたい一冊です。

The English Cottage Harry Batsford and Charles Fry

 

エンディミオン

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煙るような春の宵。こんな日に見たい映画のひとつに、19世紀のイギリスの詩人ジョン・キーツと彼が愛した女性ファニーとの悲恋を描いた「ブライト・スター」という作品があります。二人が交わす詩のフレーズがイギリスの美しい風景と重なり合い、世界でいちばん美しい恋の詩を紡いでゆくキーツの、淡くはかない命が叙情的に映し出されています。ファニーの色彩豊かな衣装、19世紀の室内装飾も見どころ。そして今回ご紹介する本は、この映画のベースともなっているキーツの代表作「エンディミオン」。ギリシア神話をもとに描かれた青年エンディミオンと月の女神の物語は、惜しくも25歳でその生涯を閉じた夭折の詩人の命の躍動が凝縮され、生命力に満ちた詩のフレーズが小川の流れのようにたおやかに、時に深い緑のように隆々と力強く心に響きます。木々の匂いの立ち込める夜、テーブルランプの灯りをつけてキーツの詩に耳を傾けるのも春の宵のひそやかな楽しみです。

エンディミオン ジョン・キーツ作 大和資雄訳

English Country Gardens

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うらうらと陽が差し込む中庭でお客様といただくお茶は本当に美味しく、イギリスのカントリーサイドの美しい風景や心温まるティータイムのエピソード、はたまた英国滞在中のハプニングなど話は尽きず、お庭のお花とそよそよ吹く風に心をゆだねながら、お客様との打ち解けた何気ないひとときがゆっくりと静かに過ぎていきます。今回ご紹介する本は、イギリスのカントリーサイドのお庭をめぐる一冊。一般の小さなコテージから、マナーハウス、牧師館など、住む人の愛情がたっぷりと注がれた60以上ものお庭が丁寧な解説で紹介されており、実際にはなかなか見ることのできない美しい夏のカントリーガーデンをまるで自分がそこを歩いているかのように楽しむことができます。小道を散歩しながらお花を眺めてひと休みしたり、ガーデナーたちの話に耳を傾けたり、日常の何気ないひとときが幾重にも重なって生まれた素晴らしい風景。人々の心の豊かさと、自然を感じて生きることの喜びが描かれた一冊です。

English Country Gardens    Ethne Clarke & Clay Perry

 

 

洋家具とインテリアの様式 古代・中世から近世・現代まで

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この仕事をしていますと、たくさんの家具との出会いがあります。お客様と家具とのご縁が生まれるまでの少しの間、大切に手入れをし、磨きをかけながら、それぞれの物語を静かに味わう時間は、他には代えられない贅沢なひとときです。今回ご紹介するこの本は、家具を扱う私たちにとって参考書ともいえる一冊。丁寧なイラストと写真で家具の歴史を時系列で見ることができ、 イギリスからはるばる当店へやってきた家具たちが、どのような成り立ちで誕生したのか、目の前の家具と照らし合わせながら深く理解することができる良書です。ページをめくるごとに、これまでに出会った家具の剛健な佇まい、趣のある木肌、美しい彫り飾りなどが、お客様との思い出と混ぜこぜになって懐かしく頭に浮かび、ついつい時間を忘れて読み耽ってしまうことも。「ウインザーチェアに腰掛けて最期を迎えたい」と話していた先代の社長。ウインザーチェアのページをめくると、イギリスの古く素朴な、本物のウインザーチェアに腰掛けて、あちらの世で私たちを見守ってくれている姿が目に浮かぶのです。

洋家具とインテリアの様式 古代・中世から近世・現代まで
嶋佐知子著 杉山りか画