The English Cottage

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

店舗を兼ねた住まいでもある当店の建物は、ごく普通の建売住宅を土台にして先代の社長が1973年頃からリフォームを重ねたもので、イギリスの田舎のハーフティンバーの建築を参考に瀬戸内海で使用されていた木造船の床板、備前の耐火煉瓦、耐用年数を過ぎた鉄道の軌道敷などを取り入れておよそ40年の長い月日をかけて完成させました。緑あふれる中庭、二棟続きの店舗、そして隣接するステンドグラスの工房は、たくさんのお客様や、ともに働くスタッフ、そして私たち家族が集う場所としてかけがえのない幸せなひとときと、潤いのある景色を提供してくれます。春になれば小鳥がさえずり、夏は蝉の声、秋には金木犀の香り、冬は枯木立から見える星空、そして年月を経るごとにしっとりとした趣を増す佇まい。この空間ができあがるまでのこだわりと熱意は並々ならぬものであったと思います。カメラを片手にイギリスの田舎町を巡り、車を停めてはハーフティンバーのコテージの写真を熱心に撮影する社長の様子が何冊ものスクラップブックを見るたびに思い出されます。今回ご紹介する本はたくさんの資料ととともにひっそりと本棚に置かれていたもの。大切に守られてきた英国のカントリーサイドのコテージが木組みの構造、茅葺や石板の屋根、煉瓦と漆喰壁の様式、各部屋の様子など、写真とイラストで丁寧に解説されています。家とともに人生を歩みながら、ゆっくりと時間をかけて読みたい一冊です。

The English Cottage Harry Batsford and Charles Fry

 

エンディミオン

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

煙るような春の宵。こんな日に見たい映画のひとつに、19世紀のイギリスの詩人ジョン・キーツと彼が愛した女性ファニーとの悲恋を描いた「ブライト・スター」という作品があります。二人が交わす詩のフレーズがイギリスの美しい風景と重なり合い、世界でいちばん美しい恋の詩を紡いでゆくキーツの、淡くはかない命が叙情的に映し出されています。ファニーの色彩豊かな衣装、19世紀の室内装飾も見どころ。そして今回ご紹介する本は、この映画のベースともなっているキーツの代表作「エンディミオン」。ギリシア神話をもとに描かれた青年エンディミオンと月の女神の物語は、惜しくも25歳でその生涯を閉じた夭折の詩人の命の躍動が凝縮され、生命力に満ちた詩のフレーズが小川の流れのようにたおやかに、時に深い緑のように隆々と力強く心に響きます。木々の匂いの立ち込める夜、テーブルランプの灯りをつけてキーツの詩に耳を傾けるのも春の宵のひそやかな楽しみです。

エンディミオン ジョン・キーツ作 大和資雄訳