エンディミオン

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煙るような春の宵。こんな日に見たい映画のひとつに、19世紀のイギリスの詩人ジョン・キーツと彼が愛した女性ファニーとの悲恋を描いた「ブライト・スター」という作品があります。二人が交わす詩のフレーズがイギリスの美しい風景と重なり合い、世界でいちばん美しい恋の詩を紡いでゆくキーツの、淡くはかない命が叙情的に映し出されています。ファニーの色彩豊かな衣装、19世紀の室内装飾も見どころ。そして今回ご紹介する本は、この映画のベースともなっているキーツの代表作「エンディミオン」。ギリシア神話をもとに描かれた青年エンディミオンと月の女神の物語は、惜しくも25歳でその生涯を閉じた夭折の詩人の命の躍動が凝縮され、生命力に満ちた詩のフレーズが小川の流れのようにたおやかに、時に深い緑のように隆々と力強く心に響きます。木々の匂いの立ち込める夜、テーブルランプの灯りをつけてキーツの詩に耳を傾けるのも春の宵のひそやかな楽しみです。

エンディミオン ジョン・キーツ作 大和資雄訳

<インテリア>で読むイギリス小説

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お店にいらっしゃったお客様とおしゃべりをしていて、よく話題に上るのが、イギリスを舞台にした映画の話。もっぱら家具や調度品など、室内のインテリアが話題の中心なのですが、特に、イギリスBBC放送が製作した映画は、時代考証がしっかりしていて、家具や装飾品、窓や扉、階段、壁、絨毯など、登場する背景のひとつひとつが、その時代を物語るかのように私たちの想像力をかき立ててくれます。エリザベス・ギャスケルの「北と南」、チャールズ・ディケンズの「荒涼館」、ジェーン・オースティンの「エマ」など、BBCの映画は見どころが盛りだくさんですが、インテリアという視点で、それらの原作をあらためて読みなおしてみるのもまた面白いのではないかと思います。今回ご紹介するこの本は、イギリス小説の室内背景に光を当て、イギリスの文化や歴史に触れながら、物語の登場人物の人間像に迫ろうとする興味深い一冊。アカデミックな内容なので、多少とっつきにくいところもありますが、美しい挿絵をゆっくりと眺めながら、熱い紅茶をいただくのもまた楽しいひと時です。

<インテリア>で読むイギリス小説 久守和子/中川僚子編著